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HTML5 & JavaScript side
twitter: @y_imaya

最近実装した最長一致探索について

はじめに

最近のコミットで最長一致探索部分を書きなおしたらシンプルになったのでメモ替わりに書いておきます。

まず、DEFLATE では chained hash table を使用することが推奨されています。 LZ77 関連では処理の高速化に関していろいろ特許があるようなので、今のところ特許問題のでていないこの方法を使用しています。

chained hash table とは、連続する 3 Byte をハッシュのキーとして辞書を持ち、 ハッシュキーの値に該当位置を記録しておくことで、高速に LZ77 の長さ距離符号の判定を行うことができます。 (なぜ 3 Byte をハッシュキーにするかというと、DEFLATE の長さ距離符号の長さの最小が 3 Byte だからだと思います。)

chained hash table を利用したとしても、わかるのは「最低でも 3 Byteは一致している」ので、 複数の候補があった場合はそこから最長のものを絞り込んでいかなければいけません。

最長一致探索

そこで、複数の「最長一致候補」から最長のものを探索する仕組みが必要になります。 以前はちょっと凝ろうとしたことをして、逆に複雑になった上にロクな出来ではなかったので、 今回以下のようなシンプルな方式に修正しました。

最長候補は常に 1 つだけ

以前は最長候補は探索処理の最後まで持っておき、最後に場合によって切り替えられるようにしていました。 ただ、あまり意味がなかったので今回は常に 1 つだけ持っておくようにしました。 この時、最長マッチ長が同じ候補が複数あった場合にどちらを選択するか決定するルールが必要なので、 「マッチ長が同じだった場合は後方(現在の位置と近い)ものを採用する」というようにしました。

なぜ後方のものを採用するかというと、長さ距離符号にした際に距離符号を短くできることがあるからです。 (extra bits はハフマン符号化の対象にならない。下記に長さによる extra bits の長さを示します。)

長さextra bits 長さextra bits
3 - 100 67-1304
11-181 131-2575
19-342 2580
35-663   

これにより無駄な配列関連の処理がばっさり減らせました。

基本は左から 1 Byte ずつ比較処理

以前はちょっと凝ろうとしたことをして複雑になってました。 すでに修正済みなので簡単にどういったことをやっていたか説明すると、例えば以下のようなマッチ候補があった時に

 "abcdefghijklmnop" ...

以下のように一定の長さに分割します。(実際に分割するわけではなく意味上の区切りですが)

  "abcdefgh" "ijklmnop" ...

そして、下記のように後方から比較していました。

  ".......h"
  "......g."
  ".....f.."
  "....e..."
  .
  .

これは何がしたかったのかというと、 chained hash table によって前 3 Byte の一致がしているのはわかっているので、 そこから絞り込む際 4 Byte 一致してるものというのは比較的多いのではないかと考えました。 ( LZ77 で圧縮可能なデータというのは偏りがあるため)

同様に 5 Byte, 6 Byte ... と見ていくよりも末尾から見ていく方が速く候補を落とせると考え、実際一定の速度向上はしました。

今回の実装では、そのへんをばっさりとやめ「基本は」左から1文字ずつ見ていくようにしました。 ただ、全ての候補を1つずつ単純に左から見ていくのも素直すぎるので、今回は以下のような仕組みを加えています。

現在までの最長マッチの長さを記録しておき、次の候補は現在の最長マッチ分右に移動し、そこから左に向かって走査していき、すべて一致していたら最長マッチ以降のデータを右に向かって調べていきます。

以下の最長マッチ候補を例に説明します。

 -. "abcdefghijklmn" // データ
 1. "abcde123456789" // マッチ候補 1
 2. "abcdefgh123456" // マッチ候補 2
 3. "abcdef12345678" // マッチ候補 3
 4. "abcdefg1234567" // マッチ候補 4
 // chained hash table の参照で 3 Byte の一致
 -. "abc..........."
 1. "abc..........."

 // 右に向かって 1 Byte ずつ一致探索した結果 5 Byte が一致
 -. "abcde........."
 1. "abcde........."
 走査方向 → 
 最長一致: 5
 最長一致マッチ: 1
 // 次の候補も chained hash table から 3 Byte の一致
 -. "abc..........."
 2. "abc..........."

 // 5 Byte 目, 4 Byte 目 と確認
 -. "abc.e.........", "abcde........."
 2. "abc.e.........", "abcde........."
 走査方向 ←

 // 最長一致までの長さは全て一致したので右に走査していく
 -. "abcdefgh........"
 2. "abcdefgh........"
 走査方向 →
 最長一致: 8
 最長一致マッチ: 2
 // 次の候補も chained hash table から 3 Byte の一致
 -. "abc..........."
 3. "abc..........."

 // 8 Byte 目を確認するが一致しないので探索終了
 -. "abc....h....."
 3. "abc....2....."
 走査方向 ←
 // 次の候補も chained hash table から 3 Byte の一致
 -. "abc..........."
 4. "abc..........."

 // 8 Byte 目を確認するが一致しないので探索終了
 -. "abc....h....."
 4. "abc....1....."
 走査方向 ←

おわりに

もっと良い方法あったら教えて下さい。

JavaScript のビット演算子に unsigned を期待してはいけない

はじめに

ビット演算を利用するケースでは unsigned を期待することが多いと思うのですが JavaScript ではその期待は捨てたほうが良いです。(ただし >>> 演算子を除く) ここではその具体例と対策、簡単な説明をしていきたいと思います。

具体例

ではさっそく、例として

0x12345678 ^ 0xFFFFFFFF

を見てみましょう。 (なぜ 32-bit かというと JavaScript のビット演算は 32-bit で行われるからです。)

0x12345678 は 2 進数表記にすると 0001 0010 0011 0100 0101 0110 0111 1000 になります。 これを XOR 0xFFFFFFFF で反転させるのですから、 下記のように計算して期待する値は 0xEDCBA987(=3,989,547,399) となるはずです。

   0001 0010 0011 0100 0101 0110 0111 1000
 ^ 1111 1111 1111 1111 1111 1111 1111 1111
 -----------------------------------------
   1110 1101 1100 1011 1010 1001 1000 0111

しかし、実際に実行してみると

-305419897
という値になります。そうです。signed なんです。 それだけならまだ分かりにくいだけで良いかも知れません。

しかし、以下の例コードを実行してみてください。

 (0x12345678 ^ 0xFFFFFFFF) === 0xEDCBA987 // false

これが通らないのはおかしいと思いませんか? (とは言っても、上記を展開すると -305419897 === 3989547399 となるので false となるのが当然なんですが。)

対策

上記の例を、あまり変更せずに通るようにするにはどうしたらよいかというと

((0x12345678 ^ 0xFFFFFFFF) >>> 0) === 0xEDCBA987 // true

とするだけです。 >>> 演算子は結果を unsigned で返すため、簡単な型変換に利用することができます。

説明

ここまで読んでも (0x12345678 ^ 0xFFFFFFFF) === 0xEDCBA987 は両方とも 16 進表記にすると 0xEDCBA987 なのに何故一致しないのか疑問に思う人もいるかもしれません。

ECMA-262 5.1 によると、ビット演算子は以下のような型変換を行うとされています。

演算子 参照した章 結果の型
~ 11.4.8 Bitwise NOT Operator ( ~ ) signed 32-bit integer
<< 11.7.1 The Left Shift Operator ( << ) signed 32-bit integer
>> 11.7.2 The Signed Right Shift Operator ( >> ) signed 32-bit integer
>>> 11.7.3 The Unsigned Right Shift Operator ( >>> ) unsigned 32-bit integer
&, ^, | 11.10 Binary Bitwise Operators signed 32 bit integer

また、JavaScript の数値は IEEE 754 であるとされています。( "4.3.19 Number value" より)

つまり、0x12345678 ^ 0xFFFFFFFF-305419897 という値は 32-bit integer ではなく、 ビット演算子によって signed 32-bit integer に変換されたのち IEEE 754 形式にされるため、 0xEDCBA987 = 3989547399 の IEEE 754 形式と一致しないというわけです。

LZSS における簡易 lazy matching 実装

はじめに

まず、LZSS とはどういったアルゴリズムなのかを簡単に説明します。
簡単な例をあげます。

"aiueoaiueoaiueo"

このような文字列が入力として与えられた時、"aiueo" の繰り返しに注目します。
2回目の "aiueo" は最初の "aiueo" からコピーするようにします。同様に3回目も同じようにします。
すると以下のように表すことができます。

"aiueo[5文字戻り,5文字分参照][10文字戻り,5文字分参照]"
(ここでは、これを簡単に "aiueo[5,5][10,5]" と表すことにします。)

この表現でもまだ無駄があります。
ここでは5文字分を一区切りとして使用していますが、"aiueoaiueo" 2つの重なりで表現した方が短くなります。

"aiueoaiueo....."
".....aiueoaiueo"


から

"aiueo[5,10]"

とすることができます。

なお、実際のデータでは LZSS は先頭ビットで長さ距離符号かそうでないかを判定するようにしています。
DEFLATE の実装では 0-255 (0x000-0x0FF) をリテラル、256-285 (0x100-0x11D) を記号として扱い、257-285とその後に続くデータで長さと距離を表しています。(256は終端記号)
また、DEFLATE ではそれぞれの範囲が、長さ 3-258, 距離 1-32768 と決められています。

LZ77 と LZSS の違い

ちなみに、よく LZ77 と書かれているものは LZSS であることが多いのですが、違いについて一応書いておきます。
LZ77 では先ほどの簡易表現の最後に「不一致だった場合は不一致文字」を追加して、上記の例は以下のように表現されます。

"a[0,0,i][0,0,u][0,0,e][0,0,o][5,10]"

不一致に関しても符号化しているため、長くなってしまうのが欠点でそれを短縮したのが LZSS という位置づけです。

lazy matching

先ほどの例は簡単な例なので特に悩む点はありませんでしたが、以下のような例はどうでしょうか。

"bcdefghijklmnabcabcdefghijklmn"

一般的な実装では、左から順に一致を見ていくようになっているので

"bcdefghijklmnabcabcdefghijklmn"
"bcdefghijklmnabc[3,3][17,11]"

となります。しかし、もっと短い表現があります。

"bcdefghijklmnabcabcdefghijklmn"
"bcdefghijklmnabca[17,13]"

です。長さと距離の符号よりもリテラルの方が短いビットで表現できるため、こちらのほうが短くなります。

lazy matching とは、前の例で [3,3] を見つけた時点で「保留」しておき、より長いものが見つかった場合はそちらを採用するようにします。
今回実装したのは、以下のようなアルゴリズムです。

 1. [3,3]を見つけたら「保留」にする。
 2. 次の位置でマッチした場合(上記の例の場合 [17,13] )、「保留」のマッチの一致長と比較する。
 3. 「保留」のマッチの方が長ければ今回のマッチはなかったことにして戻り、「保留」のマッチを採用する。
    現在のマッチの方が長ければ、前回のマッチは捨て前回の位置はリテラルとして扱い、現在のマッチを採用する。

これにより、圧縮率が上昇するようになっています。
ただし、「最長一致」の探索が増えているため、負荷は上昇します。
そのため、一般的な実装では圧縮レベルによって「lazy matching を行うかどうか判定する一致長」を変えて、ある程度長い一致ならば lazy matching せずに採用するといった工夫がされています。

JavaScript ネイティブの実装で apply を利用しない方が良いケース

はじめに

JavaScript ネイティブのメソッドには JavaScript エンジンごとの微妙な違いによってクロスブラウザではないものもあります。 apply もその一つです。 ここでは、apply で利用されることの多い Array.prototype.push, Array.prototype.unshift, Math.max, Math.min を対象に、なぜ利用しないほうが良いのかを書きます。

RangeError を投げる実装

Google Chrome 15 と Safari 5 では apply の第二引数の length が規定値以上になったところで RangeError 例外を投げます。 (この規定値は手元の Google Chrome 15 では 130,827 個、 Safari 5 では 65,537 個 でした。) なお、ここでは RangeError を投げる仕様がただしいかどうかはこの場では問題にしません。

速度

一般的にネイティブ実装の方が高速であると考えがちですが、速度を測ってみると必ずしもそうではないケースがあります。 以下の jsdo.it のコードはここで対象とするメソッドの実行速度を計測します。

for-loop vs apply (push, unshift, max, min) - jsdo.it - share JavaScript, HTML5 and CSS

Google Chrome 15

Google Chrome 15 で実行した結果、以下のような結果になりました。

  for-loop apply etc1 etc2
push 16ms 20ms - 18ms
unshift 8466ms 21ms 79ms 19ms
Math.max 6ms 20ms - -
Math.min 4ms 24ms - -

各項目の説明については jsdo.it の説明(とコード)を読んでいただくとして、unshift を除いた結果では for-loop による実装の方が高速に動作しています。 もちろん、計測誤差もあるので必ずしも for-loop にすることで高速になるとは言えませんが、少なくとも apply から for-loop の実装に変えたところで誤差レベルの損失であると言えます。

Safari 5

Safari 5 で実行した結果、以下のような結果になりました。

  for-loop apply etc1 etc2
push 265ms 174ms - 521ms
unshift 614ms 213ms 837ms 579ms
Math.max 27ms 105ms - -
Math.min 31ms 161ms - -

Array.prototype.pushArray.prototype.unshift に関しては apply が最速で、それ以外は若干微妙な気がします。 ただ、Safari 5 において RangeError が出るサイズは 65,537 以上と Chrome よりも出やすい環境なので、 やはり unshift 以外は for-loop で unshift は 分割 apply が良さそうです。

どうするべきか

Array.prototype.push, Math.max, Math.min に関しては for-loop による実装におきかえる事で、RangeError 例外の発生を考慮しないで済むようになります。

Array.prototype.unshift に関しては for-loop にするととてつもなく遅くなることが前述の計測結果からわかりますので、適切なサイズのブロックに分けて apply を繰り返すという方法が良いと思います。 この際、ブロックサイズが適切じゃなかった( RangeError がでてしまう)事態に備えて、以下のようなコードにするのが良いのではないでしょうか。 ( * jsdo.it の unshift: etc2 のコードです)

function unshift_(dst, src) {
	var buffer = 0x8000, blocks, complete = false;

	while (!complete) {
		try {
			// block
			blocks = [];
			for (i = 0, l = src.length; i < l; i += buffer) {
				blocks.push(src.slice(i, i + buffer));
			}

			// unshift
			for (i = blocks.length - 1; i >= 0; i--) {
				Array.prototype.unshift.apply(dst, blocks[i]);
			}
			complete = true;
		} catch (e) {
			if (e instanceof RangeError) {
				buffer >>>= 1;
			} else {
				throw e;
			}
		}
	}

	return dst.length;
}

まとめ

apply を使う際に、第二引数に大きな配列が来る可能性のある場合は RangeError 例外を考慮したコードにした方が良い。 unshift 以外では for-loop に置き換えるのがオススメ。 unshift の場合は分割して apply するのがオススメ。

補足

Google Chrome と Safari での計測結果は各手法の差異を計るための物で、Chrome と Safari の実行条件(配列サイズと実行回数)は異なっています。

pure JavaScript の PNG エンコーダを作りました

出来ること

  • Canvas の PNG 出力
    • 仕様にあるチャンク全てに対応

ライセンス

MIT License

使用方法

 
var pngEncoder = new CanvasTool.PngEncoder(data, opt_params);
pngEncoder.convert();

  • data: CanvasPixelArray もしくは互換の配列
  • opt_params:
    {
      bitDepth: number,
      colourType: CanvasTool.PngEncoder.ColourType,
      compressionMethod: CanvasTool.PngEncoder.CompressionMethod,
      filterMethod: CanvasTool.PngEncoder.FilterMethod,
      filterType: CanvasTool.PngEncoder.BasicFilterType,
      interlaceMethod: CanvasTool.PngEncoder.InterlaceMethod,
      gamma: number;
      chrm: {
        whitePointX: number,
        whitePointY: number,
        redX: number,
        redY: number,
        greenX: number,
        greenY: number,
        blueX: number,
        blueY: number
      },
      splt: {
        name: string,
        num: number
      },
      srgb: CanvasTool.PngEncoder.RenderingIntent,
      sbit: Array.;
      iccp: Array,
      hist: boolean,
      phys: {
        x: number,
        y: number,
        unit: CanvasTool.PngEncoder.UnitSpecifier
      },
      time: Date,
      text: {
        keyword: string,
        text: string
      },
      ztxt: {
        keyword: string,
        text: string,
        compressionMethod: CanvasTool.PngEncoder.CompressionMethod
      },
      trns: boolean
    }
    
    ※詳細はソースコードのコメントを参照

戻り値は String (binary string)

デモ(jsdo.it)

Pure JS PNG Encoder - jsdo.it - share JavaScript, HTML5 and CSS

ダウンロード

GitHub のリポジトリからどうぞ。

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